ディスクロードを買う!と決めてから、ジオメトリ警察になっているRockmanです。
さて…ロードバイクはSOH(スタンドオーバーハイト)が自分の股下よりも25mm以上低ければ、とりあえずは乗れます。
「見た目が気に入ったから♪」とか、「安かったから♪♪」などの理由で愛車を選ぶのも1台目なら全然OK。しかし、2台目以降の愛車選びでは、ジオメトリを確認してから購入することをおすすめします。
なぜなら、あるていど自転車の性格がフレーム寸法にあらわれるから。
愛車にしばらく乗っていて感じる改善したいポイント。具体的にあげると「ハンドルの高さ」「反応の良さ」「安定感」などですね。
今の自分が欲している性能がジオメトリから見極められたら、ステキだと思いませんか?
というわけで、今回のブログはステアリング系のジオメトリについて。
愛車探しの旅をつづけているワタクシが、フレーム選びで重要だと思うトレール値を中心につらつら書いていこうと思います。
自転車のハンドリングに影響をおよぼすステアリング系ジオメトリ
自転車におけるジオメトリの役割は、次の3つが挙げられます。
- コンセプト通りの性能を発揮させること
- 乗り手と自転車をフィッティングさせること
- デザインを実現させること
今回のネタでは、1と2におけるフロント側のジオメトリについて考えていきます。
ちなみに自転車の前三角で注目したいのは、先ほど申し上げた通り、ステアリングまわりでございます。ここはハンドリングに直接影響してくる最重要部分。
フレームのヘッドチューブ長や角度。それに付随するフロントフォークやタイヤがどのような位置関係で取りつけられているか。ここがハンドリングの良し悪しを決める鍵となります。
要素となるのは、「ヘッド角(ヘッドアングル)※1.」「フォークオフセット」そして、この2つとホイール径から算出する「トレール値」。
ロードバイクをロードバイクたらしめている操作感のダイレクトさ、気持ちよさは、ここで決まるといっても過言ではありません。
厳密にいうとBBドロップやホイールベース、前後重量配分やその他の要素も関係してくるけどね。
※1.ヘッド角(ヘッドアングル)
ヘッドチューブの中心線が水平線となす角度のこと。
キャスター角(キャスターアングル)とほぼ同じ意味だが、こちらはヘッドチューブの中心線と路面の水平線とでなす角度をあらわしている。
トレール値とは
トレールとは、ステアリング軸とタイヤの接地点との距離をあらわしたもの。この値が自転車のハンドリングに大きな影響をおよぼす重要なポイントです。
トレールの特性をざっくり示すと…
- 長くなれば直進安定性がよくなる
- 短ければ俊敏なハンドリングになる
カタログには記載されない場合も多いこの値。トレール値は計算でだせるので、こちらのサイトをよく利用させてもらっています。
ちなみに、ロードバイクのトレール値は標準で55〜58mm。許容値は50〜63mmほど。
フレームビルダーによって見解は別れますが、ブリヂストン・アンカーの技術者はこのように考えているようです。
傾向としては、「オンロードのレーサー <エンデュランス(長距離)< オフロード」という順で長くなります。
とりあえずの認識として、トレール値はジャンルによって適正値が異なる。標準的な数値は下の通りと、ざっくり覚えておけば良いでしょう。
- ロードバイク:50〜63mm
- エンデュランスモデル:57〜67mm
- MTB(マウンテンバイク):100〜120mm
ヘッド角・フォークオフセット・トレールの関係
- ヘッド角を立てる(角度が大きい)とトレールは短くなる
- ヘッド角を寝せる(角度が小さい)とトレールは長くなる
- フォークオフセットが大きいとトレールは短くなる
- フォークオフセットが小さいとトレールは長くなる
・
・
・
(トレール:ヘッド角が寝れば長くなり、フォークオフセット量を増やすと短くなる)
トレールは、ヘッド角とフォークオフセットの組み合わせで変わってきます。
- どんな角度のヘッドチューブに…
- どの程度オフセットさせたフロントフォークを…
- どんなサイズのタイヤで取りつけるか
これらの要素からトレール値が決まります。
設計者のアプローチとしては、想定する使用者像(身長や体重や性別、柔軟性など)から理想的なトレール値にするためにヘッド角とフォークオフセット量を逆算して導き出すことが多いようです。
ちなみに、Sサイズ以下のフレームではトップチューブ長を短くするためにヘッドチューブを寝せて(角度を小さく)シートチューブを立てる(角度を大きく)やり方がセオリー。
XXSサイズのフレームで使われる寝せたヘッドチューブの角度は70〜70.5degていど。Mサイズ以上の標準的なヘッド角、73degと比較すると2.5〜3degほどの差が出ます。
小さいフレームでは、どうしてもフロントセンターの寸法が短くなるため、つま先と前輪の距離はタイトになりがち。
なので、つま先と前輪を接触させない配慮が必要になってきます。いわゆるトークリアランスの適正化ですな。
この問題を解決するためには、大きめのフォークオフセットを用いることで前輪を前側に移動させ、ヘッドチューブの角度を寝せてバランスをとる必要があるのです。
これによって、クリアランスの問題を解決すると共にトレール値も適切に調整できます。
理想的なフレームは、サイズごとに異なるオフセット量のフロントフォークを設定すること。ここがメーカーにとって、コストや製造効率の面で難しい部分なんですね。
ハンドリングに影響するトレール値とP点
ロードバイク界隈を見渡すと、おおよそ54(Mサイズ)以上のフレームなら、基本的にどのメーカーでも真っ当なジオメトリをしています。
ところが、50(Sサイズ)以下になるとジオメトリに無理が生じてくる場合も少なくありません。
それはどういうことかというと、700Cサイズのホイールに大小異なるフレームを合わせる必要があるから。そして、共通サイズのフロントフォークを使うから。
では、具体的にどの部分に無理が生じてくるのでしょうか?
代表的なものがトレール値でございますな。
Sサイズ以下のジオメトリが厳しくなる最大の理由は、共通オフセットのフロントフォークを使うためです。
650Cあたりのホイールを使用するなら、もっとヘッド角を立てることができるのでしょう。しかし、700Cという主流規格のホイールを使用するとトークリアランスを確保しつつ全体のバランスをとるためにはヘッド角を寝せる必要があります。
コストの面から共通のフロントフォークしか使えない場合、スモールサイズではトレールを修正することができません。トレール値は長いままです。
こうなってくると、サイズごとに異なるハンドリングになるのは避けられません。
また、ハンドリングにはトレールだけではなくP点の位置も重要となります。P点とは、ヘッド軸の延長線とフロントエンドの垂線がまじわる部分。
ヘッド角とフォークオフセットが違っていてトレール値が同じ場合、このP点の位置いかんでハンドリングに差が生じます。
ちなみに、P点の位置が高いほど機敏なハンドリング。低いほどダルなハンドリング。
フレームサイズが違っていても同じハンドリングにするためには、トレール値と合わせてP点の位置も適切に調節するのがキモとか。
サイズ違いでも設計通りのハンドリングを実現するには、いろいろと苦労があるようですね。
メーカーにおけるフォークオフセットの考え方は2通り
- フォークのオフセットは1種類のみ。
(例:・ジャイアント・グスト・ビアンキなど) - フォークのオフセットが2〜3つある。
(例:・フェルト・サーヴェロ・ブリヂストンなど)
メーカーサイドの考え方次第でフロントフォークの扱い方もかわってきます。
フォークを一種類しか設定しないメーカー。そして、複数用意するメーカー。
欧米人と比べて背の低い我々日本人は、後者を選んだ方が幸せになれる確率は高いと思われます。しかし、そう単純な話でもありません。
1インチのコラムを使用しフォークブレードも細かったスチール時代のロードバイクと比べて、今は大径のベアリングにカーボン製のフォークで剛性をコントロールするのが主流。
そうすると、フレームの性能がジオメトリの歪さをある程度をカバーできるようになったとも言えます。
コストを抑え、フレームの性能でジオメトリをカバーする思想。コスト増になっても基本を大事にしてフロントフォークを複数用意する思想。
メリット・デメリットがあるので、どちらが正解とは一概にはいえないようです。
やはり、気になるバイクは試乗してみないとわからんよね〜。
現愛車の不満点を新型で解消したい
2台目以降のロードバイク選びともなると、現状の不満点を解消してくれるフレームを選択したくなるはず。
ちなみに、ワタクシRockmanの現愛車、KOGA KIMERAに感じているネガティブポイントは以下の通り。
- ヘッドチューブが短すぎる
- ヒルクライムがしんどい
- めちゃくちゃ硬いウルトラ剛性感(笑)
・
・
・
ワタクシのKIMERAは、トラックレース用のフレームをベースに開発された平地を高速移動するためのマシン。前傾姿勢がかなりキツイのです。
ちなみに、RockmanのKIMERAは適応身長よりもワンサイズ小さい47サイズということもあり、ヘッドチューブは110mmでスタックが511mmしかありません。
平地を高速移動するには最高の相棒なんですが、ワタクシ加齢で鬼のような前傾姿勢を強要されるのがしんどくなってきました。
腰痛という爆弾も抱えていますしね(笑)
ついでに、こいつはヒルクライムもしんどい。きつい前傾姿勢とすぐに脚が売りきれそうになる岩のような剛性感。
そして、63mmというロードバイクの標準トレール上限の寸法は平地巡航では安定したハンドリングがあるものの、ヒルクライムではダルめのハンドリングになります。
次の愛車ではここら辺が解消された、もっと楽なやつに乗りたいというわけです。
個人的に素晴らしいと思うジオメトリのロードバイク
ここでは、フォークオフセットを複数設定して、身長が低くても変わらないハンドリングを実現させてくれそうなフレームを挙げてみます。
FELT FRのジオメトリ
FELTのFRシリーズはオールラウンドモデル。
43〜58サイズのラインアップでフロントフォークのオフセットは3つ用意されています。
ジオメトリ表にトレール値がのっていないので、25Cのタイヤ装着と仮定して計算すると結果はこの通り。
最小の43サイズではトレール値が64mm。
47と51サイズでは58mm。
54サイズは54mm。
56サイズは55mm。
58サイズは53mm。
61サイズでは52mm。(このサイズは日本では未導入)
最小サイズはトレール値が許容値を1mmほど上回っておりますが、フォークが全て共有となる他メーカーと比べると相当マシな数値です。
一方で47〜61サイズではトレール値の標準範囲に入っているものの値がバラけていますね。ヘッドセットのロワベアリングをサイズごとに変更している影響でしょうか。
なんにせよ、サイズごとにヘッドの剛性やハンドリングが最適化された結果かと思われます。
リーチやスタックも当然キレイな数字です。
唯一のデメリットは高価なところ。105Di2の完成車で税込88万円ほど。当然、ワタクシでは手が出せません(笑)
サーヴェロ のジオメトリ
サーヴェロは、・R5・S5・Soloist・Caledoniaのフレームで、全サイズ同等のトレール値となっています。
Caledoniaにいたっては、すべて60mmという表記。ちなみに、フォークオフセットの種類は、FELT同様の3種類。54〜61サイズのヘッド角とフォークオフセットは共通ですね。(ヘッドチューブ長は当然ちがう)
3種類という同じ数のフォークを用意しつつ、FELTとは設計思想が違うのが面白いですねぇ〜。
とても良いバイクなんでしょうが、サーヴェロもウルトラ高価なので、ワタクシの手には負えません。
ブリヂストン RP8のジオメトリ
440〜530(44〜53に相当)という日本人に合わせたフレームサイズのラインアップ。
25Cのタイヤ装着でトレール値を計算すると下の通り。
440サイズで59mm。
490サイズで58mm。
510と530サイズは59mm。
フォークオフセットの種類は2つですが、トレール値はほぼ一定です。これもすごい!
リーチやスタックの値も実に美しい。税込55万円で105Di2モデルが買えるのは良心的ですね。
願わくば、もう少しフレームカラーを増やしてほしいところ。白と黒だけではちょっとストイックすぎます。
以前あったカラーオーダーシステムがまた利用できればなぁ…
本命!ジャイアントTCR のジオメトリ
ジャイアントのTCR Advanced PROは前回のブログで書いた通り、ワタクシの本命でございます。
モデルチェンジ間近とも噂されるTCRは型としては古いのですが、フックレスのカーボンホイールがついて57万2,000円というコスパいい設定。これは今の世にあって相当のアドバンテージがあります。
エイジドデニムのカラーも好みだし、オールラウンドタイプのフレームは現状ワタクシが求めているニーズを満たしています。
じゃあ、さっさと買えばいいだろ!と思いますよね?
でも、試乗しないと買えませんわ…。
というのもジャイアントはフォークオフセットを一種類しか設定しないメーカー。
Rockmanの適応サイズ445(Sサイズ)のスタック値は64mmもあります。(表中の「G」)
64mmというとのKIMERAよりも1mmほど長い値です。これではキビキビしたハンドリングは期待できません。
Mサイズ以降なら、ヘッド角が73degと一定なのでトレールが59.2mmと最適化されいます。
自分の身長が180cm前後あればよかったのになぁ〜と悔やまざるを得ません。
ジャイアント新型DEFYのジオメトリ
このブログを書いている最中にリリースされた新型のDEFY。パッと見た感じ、これまた素晴らしいモデルっぽいのですよ♪
なので、TCRにならびDEFYが愛車候補の筆頭に上がりました。
軽量と快適さを実現した新型フレームでは、38Cまでのタイヤを飲み込むことが可能。これなら、グラベル遊びにも対応できます。
ギミック付きの振動吸収システムが採用されていないシンプル構造もまた良し!北米系のエンデュランスモデルと比べてトラブルとは無縁そう。
しかも、エンデュランスロードなのにSサイズではTCRの同サイズよりも若干スタック短めの63.4mm。(表中の「G」)
これは乗り比べしてみたい一台です♪
フックレスリムのカーボンホイールにSLグレードと同じフロントフォークをつけたPROモデルが63万8,000円。
ランクがひとつ下がるアドバンスド1では47万3,000円。これは競争力が高そうです。
レースで活躍する類のモデルではないのでプロペルやTCRに比べて地味さはあります。
ガッ!今のワタクシにはDEFYが一番刺さる気がします。
KIMERAよりも30mm長いヘッドチューブはフレーム直付けステムでいけそう。コラムスペーサを入れない分、ルックス的にもカッコいいでしょう。多分!
時間を作って本気の試乗をしにいきたいモデルですね。
DEFYはエンデュランスロードなのにレーシングジオメトリに近いね!
まとめ
理想論として、身長170cm以下の方はフォークオフセットを複数用意してあるロードバイクを選びたいもの。
しかし、色や形などビジュアル面で刺さらないものはあるし、何より予算オーバーなら手が出せないのが現実でございます。
気になるモデルは、まずジオメトリをチェック。トレールやスタック、リーチなどを見て問題なさそうならそれでよし!ダメなら試乗して乗り味を吟味したいものです。
ぶっちゃけた話、個人的に1台目はトレイル値を見てもあまり意味がないと思っています。なんせ、ロードバイクに乗った経験がありませんからね。何が自分の好みかわかりません。
でも、2台目以降の愛車選びでは、トレール値を見てハンドリング特性をあるていど推測してみるのも面白いと思います。
まぁ…メリダのようにヘッド角やフォークオフセットすら公開していないメーカーもあるので、推測するのにも限界はありますけどね。
ロードバイクについて深い知識を得たい方はこちらの書籍を読んでみると面白いぞい。
コメント
細かいジオメトリーって気にした事無かったし多分これからも気にしないと思う…
高剛性でヒルクライムが辛い…
以前ロックマンさんが紹介してたS-WAKSのターマックSL7も5%以上の勾配だとハイケイデンス維持出来ない人だと他のバイクより遅くなる事が発覚しヒルクライム勢から人気が失くなったそうです
ヒルクライム…
ピナレロのドグマFは東レのT-1100カーボンを独占契約していて世界中で唯一エアロ形状なのに軽量オーランドを謳ってるローディ垂涎のフレームですがどうですか?w
自分はジオメトリーなんて細かい事はあまり気にせずメーカー推奨範囲であれば後は見た目の好み&予算で選ぶ雑な性分なんで…
予算気にせずにってなると選ぶ基準には希少性が加わりますね
あまり見かけないバイク
選手の名を冠したメーカー、エディーメルクスやチッポリーニなんか乗ってる人見た事無いしそそられますね
あ…キャニオンが選択肢に入るなら同じくネット販売専門の新興メーカー、台湾のELVIS BIKEなんかはどうですか?
自転車系ユーチューバー、コスパチャンネルの配信者さんが今年購入して高評価してましたよ
ちなみにこの人の前のバイクはキャニオンです
>カディエ先生 様
ガチガチの高剛性フレームはロマン枠ですね。レースで勝ってきた名車にオレは乗ってるんだぜ!的な。
脚に辛すぎて苦行のヒルクライムがさらに地獄になりますけど(笑)
買える買えないは別として、東レT1100を使用したフレームは一度乗ってみたいですね〜。
あれ、素材メーカー的に20年に一度の大きな開発だったらしく、高強度と高弾性を両立させた次世代航空機用のカーボン繊維ですから。
乗り味がとても気になります。ご存知の通り、目ん玉が飛び出る価格ですが…。
希少性の高いフレームを見かけると、思わず目で追ってしまいます。
エディーメルクスやチッポリーニもSNSでたまに見かけるだけで、現実世界ではなかなかお目にかかれませんものね。
ELVISはオリジナルカラーでオーダーできる画期的なところが気になっています。
あと、YOELEOなんかもコスパ良さそうですね。このメーカーのフレームを切断した動画をみたことがありますが、内部がとてもキレイだったのが印象に残っています。